April 18, 2007

ハイ・フライヤー−次世代リーダーの育成法

ハイ・フライヤー―次世代リーダーの育成法
評価:★★★★

仕事以外の本で久しぶりにちゃんと読みきった一冊です。

とても面白かった。

経営のリーダーシップ開発について二つの考え方が整理されています。
ひとつは、リーダーシップや経営能力(“Good stuff”)というのは生まれつき備わった才能であるというもの。会社の役割は、能力のありそうな社員を様々な場でテストし、いわばネガティブ・チェックをして振り落としていくことにあります。最後に残った人が経営幹部になる、という訳です。
もうひとつは、リーダーシップは生まれつきではなく、人材育成によってCultivateされていくものである、という考え方。もちろん生まれつき向いていそうな人はいるけれども、いくら才能があれば成功できるというわけではない。当人に足りない経験を特定し、業務を通じてその経験を積ませていくことが会社の役割である、というものです。

世の中の多くの会社、特に欧米型の会社が前者のやり方で経営者を決めているのに対し、『ハイ・フライヤー』では後者の考え方を取っています。それは「CEOにまで上り詰めてすぐに失脚する人材(脱線者)が多い」という事実が気になり、事例研究をした結果であるそうです。もともと才能が有り、しかも長年に渡って様々なテストを潜り抜けてきた人材が、CEOになったとたんに失敗するのはどういうわけか、選び方が間違っていたのではないのか、という疑問を出発点としています。
研究の結果浮かび上がったのは、ネガティブ・チェックで経営者を選び出すということはつまり、確率論的に失敗せずにトップまで到達しただけであって、その人材が本当にどんな状況でも対応できるのかは分からない、ということ。また、周りが振り落とされていく中で成功を続けた結果、傲慢で人のアドバイスを聞かない人になってしまう確率が高いということ。
そうではなく、会社はポテンシャルのありそうな人材に対して、当人がこれまで経験していない分野で新しいチャレンジを与え、失敗から学ばせ、成長を促すべきである、と著者は説いています。そういった人たちをテストで脱線させてしまっては、必要な経営人材を必要な人数確保できず、結果的に会社にとってロスが大きいからです。
一番大事なのは「生まれつき」であることではなく、「新しい経験から学ぶ力」と「積極的に周りのフィードバックを求め、フィードバックをポジティブに受け止める力」だというポイントは、自分にとってもとても参考になりました。

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